「有料老人ホームの現状と課題」で見る住宅型有料老人ホームの重度化【介護職人が解説】

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厚生労働省は2026年7月、「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」で、有料老人ホームの現状と課題をまとめた資料を公表しました。入居者の年齢や要介護度、月額費用、入居経路、看取り、職員配置、介護サービスの利用状況まで、150ページにわたって整理されています。

その中で僕が気になったのは、介護付き有料老人ホームより、住宅型有料老人ホームの方が中重度の入居者割合が高いという数字です。「介護付き」という名称から受ける印象とは、少し違う結果ではないでしょうか。

なぜ、このような違いが生まれているのか。資料では、入居者の要介護度を示した後に月額費用と介護保険の利用者負担割合が置かれ、その次に入居時点の要介護度が続きます。厚生労働省が両者の因果関係を明言しているわけではありませんが、僕には、この順番にも意味があるように感じました。

住宅型で中重度者が多い背景には、介護の仕組みだけでなく、入居に必要な費用と、住み替える時期が関係している可能性があります。今回は資料に示された数字と、僕が介護現場で見てきたことを重ねながら考えます。

目次

「介護付き」より住宅型に中重度者が多い

最初に、それぞれのホームにどのような人が暮らしているのかを見ていきます。介護付きと住宅型という名称だけでは、現在の入居者像までは分かりません。

名称から想像する入居者像との違い

令和7年度調査では、要介護3〜5の入居者は、介護付き有料老人ホームで約39%、住宅型有料老人ホームで約56%でした。住宅型では、半数を超える入居者が要介護3以上です。

ホーム単位で見ても、平均要介護度3以上の住宅型は、2015年の35.4%から2025年には44.6%へ増えています。住宅型には比較的元気な人が暮らしているというイメージだけでは、説明できない数字です。

住宅型は、介護をあまり必要としない人だけの住まいではありません。現在は中重度者の生活を支える受け皿にもなっています。

「介護付き」と「住宅型」で異なる介護の受け方

介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、ホームが介護サービスを包括的に提供します。人員や設備、運営について、介護保険法に基づく基準があります。

住宅型では、住まいと介護サービスの契約が分かれています。入居者は必要に応じて、訪問介護、訪問看護、デイサービスなど、外部の介護・医療サービスを組み合わせて生活します。

ただし、介護を外部から受ける仕組みだから、重度者が暮らせないという意味ではありません。実際の入居者像は、制度上の名称より、そこでどのようなサービスを組み合わせられるかによって変わっています。

介護付きと住宅型には月額費用の差がある

住宅型で中重度者が多い理由は、要介護度の数字だけを見ても分かりません。そこで次に、入居者が毎月負担する費用と、介護保険の利用者負担割合を見ていきます。

月額費用にある約13万円の差

2025年の平均月額費用は、介護付きに当たる特定施設が260,064円、住宅型が128,847円でした。単純な平均では約13万円の差があります。

価格帯を見ると、特定施設では30万円以上が33.5%を占めています。3施設に1施設以上は、一人当たり毎月少なくとも30万円が必要になる計算です。一方、住宅型で最も多いのは10万〜12万円未満で、26.9%でした。

ただし、この月額費用は家賃、共益費、基本サービス費、食費、光熱水費を合計したもので、介護・医療サービスの自己負担分は含みません。住宅型では外部サービスの利用量によって、実際に支払う総額が変わります。

住宅型の方が必ず安くなるとは限りません。それでも、毎月必要になる基本費用にこれだけの違いがあれば、本人や家族が入居先を選ぶときの大きな条件になると思います。

利用者負担割合に表れた入居者層の違い

2019年調査では、介護保険の1割負担の入居者は、介護付きが76.7%、住宅型が88.0%でした。反対に、相対的に所得の高い人が該当する3割負担は、介護付きが11.0%、住宅型が3.4%です。

1割負担と3割負担のどちらを見ても、介護付きの方が比較的所得の高い人に選ばれている傾向があります。ただし、費用と利用者負担割合は調査年が異なり、この数字だけで所得が入居先を決めたと証明できるわけではありません。

それでも、介護付きには月額費用の高いホームが多く、3割負担の入居者割合も住宅型より高くなっています。住宅型と介護付きでは、利用している人の経済状況に差がある可能性は否定できないと思います。

住み替える時期にも費用が関係しているのか

ここで入居時点の要介護度を合わせて見ると、介護付きと住宅型の違いが、もう少し具体的に見えてきます。

軽度で入る人が多い介護付き、重度で入る人が多い住宅型

2025年の新規入居者を見ると、自立・認定なし・要支援1・2までの割合は、介護付きが15.7%、住宅型が7.8%でした。反対に、要介護3〜5で入居した人は、介護付き37.1%、住宅型46.6%です。

介護付きには比較的軽度の段階で入る人が住宅型より多く、住宅型には介護度が高くなってから入る人が多いことが分かります。しかも、早い段階で入る人が多い介護付きの方が、月額費用は高くなっています。

高齢者向け住まいへ移り、その後もそこで暮らし続けるのであれば、月額費用は何年にもわたって必要になります。比較的軽度の段階から、月額30万円以上の住まいを選べる人は、当然限られると思います。

経済的に余裕がある人は、軽度のうちから将来を見越して介護付きへ移ることができる。一方、費用の負担が難しい人は、在宅生活をできる限り続け、介護度が高くなってから比較的費用を抑えやすい住宅型を選ぶ。この違いが、現在の入居者像につながっている可能性があると僕は考えています。

介護が必要になった時期と入居できる時期は同じではない

僕がデイサービスやお泊まりデイサービスの運営に関わっていたときも、利用者や家族が入所先を考えるうえで、費用は非常に大きな問題でした。介護が必要になったからといって、希望する施設の費用を負担できるとは限りません。

お泊まりデイサービスを長期利用する人の中には、グループホームなどより費用を抑えられることを理由に選ぶ人もいました。特養へ入れれば費用面で助かるものの、すぐには入れず、待っている間の生活をお泊まりデイで支えていた人もいます。

これは住宅型有料老人ホームで経験した話ではありません。ただ、介護が必要になった時期と、入居できる時期が同じとは限らない現実はあります。今回の資料だけで因果関係まで証明することはできませんが、住宅型で重度者が多い理由には、費用も関係しているのではないかと僕は感じています。

住宅型の多様性を一律に狭めない

住宅型で中重度者が増えたからといって、住宅型をすべて介護付きに近づければ解決するとは限りません。住宅型が持つ幅広さには、利用者が住まいを選べるという価値もあります。

自立中心から重度者の受け皿まである意味

厚生労働省の資料も、有料老人ホームは民間の工夫により、多様な料金とサービスを展開し、高齢者向け住まいのニーズへ柔軟に対応してきたと整理しています。比較的自立した人を中心にするホームも、外部サービスと連携して重度者を支えるホームもあります。

介護が必要になる前から、生活環境や安心を求めて住宅型を選ぶ人がいてもよいと思います。高齢者向け住まいは、日常生活ができなくなった人だけが行く場所ではありません。

住宅型、介護付き、特養のいずれであっても、そこで暮らす本人にとっては自分の住まいです。「住宅型」という名称は、特定施設の指定を受けていない有料老人ホームを制度上区別するものであり、本人の暮らし方まで一つに決める言葉ではありません。

新しい役割を既存ホームへ一律に背負わせない

重度者を多く受け入れるホームには、生活を支える体制が必要です。ただ、比較的自立した人を対象にしてきた住宅型まで、同じ人員や設備を一律に求めれば、そのホームが提供してきた住まい方を失わせる可能性があります。

2026年6月に成立した法改正では、中重度の要介護者など、特に入居者保護の必要性が高い人を対象とするホームへ登録制を導入することになりました。住宅型全体を同じ基準で一括するのではなく、入居対象者の要件に応じて運営・人員基準などを設ける考え方です。

既存事業者は、現在の制度を前提に建物、人員、料金を組み立てています。住宅型の多様性を残しながら、重度者を支えるホームには実態に合う責任を求める。その際には、基準を満たすための費用が入居者の負担へどう影響するかまで見る必要があります。

住まい選びで確認するのは現在より将来

住宅型の幅を残すなら、その違いを入居前に理解できることが欠かせません。今の状態で暮らせるかだけでなく、介護度が上がった後の生活まで考えて選ぶ必要があります。

重度化・通院・夜間・看取りまで確かめる

確認するのは、重度化しても住み続けられるのか、夜間は誰が対応するのか、通院介助は含まれるのか、医療的ケアや看取りは可能か、どのような状態になれば転居が必要になるのかです。

僕の周囲でも、老人ホームへ入れば必要なことにはある程度対応してもらえると思っていたところ、通院介助が含まれず、遠方の家族が毎月通うことになったという話がありました。施設の名称だけでは、家族に残る役割まで分かりません。

ホーム側は、できることとできないことを具体的に説明する。本人と家族は、現在の料金や空室だけでなく、状態が変わった後の支援と負担まで確認する。住宅型の多様性は、この両方があって初めて選択肢として生きます。

住まいを考える時期も過渡期にある

現実には、本人も家族も在宅生活をぎりぎりまで続け、もう難しいという段階で急いで住まいを探すことがあります。その状況では、今すぐ入れる場所が優先され、数年後の生活まで比べる余裕を持ちにくくなります。

現在介護を受けている高齢者の多くは、若い頃に今の介護保険制度が存在しませんでした。早くから将来の介護を考えるべきだったと、本人や家族だけへ責任を返すこともできません。

これから高齢期を迎える世代は、介護が必要になる前から、どこで暮らし、費用をどう負担し、重度化した後に誰の支援を受けるのかを考えることになります。住宅型で中重度者が増えている数字は、住まいを選べる時期と経済的な条件まで含めて、介護の受け皿を考える必要があることを示しているのだと思います。

参考:厚生労働省「有料老人ホームの現状と課題について」厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律について」厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会(第8回)」

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