令和8年度の処遇改善加算はどう変わる?賃上げ期待と制度の複雑さ【介護職人が解説】

介護職人ラボ08052602
目次

令和8年度の処遇改善加算は、賃上げと職場環境改善の両方に関わる改定

令和8年度の介護職員等処遇改善加算は、介護職員の賃金改善だけを見る制度ではありません。加算率の引上げ、上乗せ区分の新設、対象サービスの広がり、職場環境等要件への対応が重なっているため、介護職員にも、介護施設・事業所で働く職員にも、管理者や経営者にも関係する内容です。

働く職員にとって大きいのは、加算率が上がることで、事業所に入る処遇改善加算の額が増える可能性があることです。事業所が要件を満たして算定できれば、賃金改善に使える原資は今までより大きくなります。

ただし、加算率が上がったからといって、すべての職員の給料が同じように上がるわけではありません。実際にどう配分されるかは、事業所の取得区分、配分方針、職種ごとの扱いによって変わります。

もう一つ大事なのは、処遇改善加算が職場環境の改善とも深く関わっていることです。生産性向上や協働化、職場環境等要件への対応が制度の中に入っているため、単に「給料を上げる制度」として見るだけでは足りません。

この記事では、令和8年度の介護職員等処遇改善加算について、賃金アップに期待できる部分、職場環境改善につながる可能性、そして制度が複雑になったことで現場や事業所に生じる負担を見ていきます。

参考:厚生労働省 介護職員の処遇改善TOP制度概要

この記事で扱うのは「令和8年度の介護職員等処遇改善加算」

この記事で扱うのは、令和8年度の介護職員等処遇改善加算です。補助金や補正予算、賃上げ支援事業にも関係する話はありますが、この記事の中心はあくまで令和8年度の処遇改善加算です。

処遇改善加算は、介護職員などの賃金改善を目的とした加算です。事業所が一定の要件を満たして加算を算定し、その加算額を職員の賃金改善に使う仕組みです。

令和6年度には、これまで分かれていた処遇改善関係の加算が一本化され、介護職員等処遇改善加算として整理されました。令和8年度では、その処遇改善加算がさらに拡充され、加算率の引上げや上乗せ区分の新設などが行われます。

制度の説明資料には、処遇改善加算の話だけでなく、補正予算による賃上げ支援や職場環境改善の話も近い流れで出てきます。そのため、何が処遇改善加算の話で、何が補助金の話なのかが分かりにくくなっています。

この記事では、そこを混ぜずに見ていきます。補助金や補正予算の話は、制度理解に必要な範囲で触れますが、主題にはしません。

関係するのは介護職員だけではなく、介護施設・事業所で働く人と運営側

この改定は、介護職員だけに関係する話ではありません。介護施設や介護事業所で働く職員、管理者、法人、経営者にも関係します。

もちろん、介護職員にとっては賃金改善の話として重要です。介護の仕事は、入浴介助、排泄介助、移乗、認知症の方への対応、送迎、記録、家族対応など、現場で求められることが多い仕事です。

その一方で、介護事業所は介護職員だけで成り立っているわけではありません。生活相談員、看護職員、機能訓練指導員、事務職員、送迎職員など、さまざまな職種が関わっています。

そのため、処遇改善加算を見るときには、介護職員の賃金改善を中心にしながらも、介護事業所全体で働く人たちにどう反映されるのかも重要です。

また、令和8年度からは、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅介護支援など、これまで処遇改善加算の対象外だったサービスにも新たに処遇改善加算が設けられます。介護保険サービス全体で、処遇改善の影響を受ける範囲はさらに広がります。

変わるのは「加算率」「上乗せ区分」「対象サービス」「特例要件」

令和8年度の処遇改善加算で大きく変わるのは、加算率、上乗せ区分、対象サービス、特例要件です。

まず、加算率が引き上げられます。加算率とは、事業所の介護報酬に対して、処遇改善加算をどの割合で上乗せするかを示すものです。

次に、加算Ⅰロ、加算Ⅱロといった上乗せ区分が設けられます。これまでの加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳという区分に加えて、令和8年度ではⅠイ、Ⅰロ、Ⅱイ、Ⅱロという形で区分が分かれます。

この違いには、生産性向上や協働化への取組が関係します。ここでいう生産性向上とは、職員に無理をさせて早く働かせるという意味ではありません。記録業務の効率化、ICT機器の活用、業務分担の見直しなどによって、職員の負担を減らしながらサービスを続ける考え方です。

また、令和8年度特例要件も出てきます。ケアプランデータ連携システムへの加入、生産性向上推進体制加算の取得、社会福祉連携推進法人への所属などが関係します。

制度だけを見ると「加算率が上がる」「上乗せ区分ができる」という話ですが、現場から見ると「どの加算を取れるのか」「何をすれば上乗せになるのか」「どの書類をいつまでに出すのか」という問題になります。

加算率が上がることで、職員の賃金アップに期待できる部分はある

令和8年度の処遇改善加算では、職員の賃金アップに期待できる部分があります。加算率が上がることで、事業所が要件を満たして算定できた場合、賃金改善に使えるお金が増える可能性があるからです。

介護職員にとって、これは大きな意味があります。介護の仕事は人の生活を支える仕事であり、責任も負担も軽いものではありません。それにもかかわらず、介護職の賃金は十分とは言えない状況が長く続いてきました。

処遇改善加算によって賃金改善の原資が増えること自体は、現場にとって前向きに受け止めてよい部分です。

事業所に入る処遇改善加算の額が増える可能性がある

加算率が上がれば、事業所に入る処遇改善加算の額は増える可能性があります。これは、働く職員にとって賃金改善への期待につながります。

ただし、加算率が上がることと、個人の給料が必ず上がることは同じではありません。処遇改善加算は、事業所が算定し、その加算額を賃金改善に使う仕組みです。

実際に誰に、どのように、どの程度配分するかは、一定のルールの中で事業所が判断します。サービス種別、加算区分、職員数、既存の賃金体系、法人内の配分方針などによって、職員一人あたりの金額は変わります。

国の資料で「月1万円」や「最大月1.9万円」といった数字が出ると、働く側は「自分の給料もそれだけ上がるのか」と期待します。しかし、これは制度全体の目安や最大値として示されているものであり、個々の職員の給与額を保証するものではありません。

ただし、全職員に同じ金額がそのまま支給されるわけではない

処遇改善加算は、加算額がそのまま全職員に均等配分される制度ではありません。事業所ごとの配分方針によって、職員ごとの手当額に差が出ることがあります。

僕が働く事業所では、すでに介護職員以外にも処遇改善手当を支払っています。生活相談員や機能訓練指導員にも手当を出しています。

もちろん、介護職員の給料を上げることは大切です。介護職員の負担は大きく、処遇改善の中心に置かれるべき職種であることも分かります。

ただ、同じ介護事業所で働く仲間である以上、介護職員だけでなく、他の職種にも処遇改善の効果が届く形を考えることは大切だと思います。差をつけること自体はあってよいです。

もし、これまで「処遇改善加算は介護職員にしか払えない」と勘違いしていた事業所があるなら、今回をきっかけに見直してみてもよいのではないでしょうか。

賃金改善は、介護職員にとって大きな意味がある

介護職員にとって、賃金改善は大きな意味があります。介護の仕事は、やりがいだけで続けられる仕事ではありません。

現場では、利用者の安全を守りながら、食事、入浴、排泄、移動、認知症対応、家族対応、記録業務などを行います。人手不足の中で、限られた人数で現場を回している事業所も少なくありません。

そのような中で、賃金が十分に上がらなければ、人材の確保も定着も難しくなります。介護職員が安心して働き続けるためには、仕事内容に見合った賃金改善が必要です。

一方で、賃金改善は介護職員だけの問題でもありません。介護事業所全体の職員が支え合っているからこそ、サービスは成り立っています。

だからこそ、処遇改善加算は「介護職員の賃金を上げる制度」としてだけでなく、「介護事業所で働く人たちの処遇をどう改善するか」という視点でも見る必要があります。

職場環境の改善も、処遇改善加算の中でより重要になっている

令和8年度の処遇改善加算では、賃金だけでなく職場環境の改善も重要です。制度の中に職場環境等要件が組み込まれているため、働きやすさを整えることも処遇改善の一部として見られます。

介護現場では、給料が上がることはもちろん大切です。しかし、給料だけでは人は定着しません。休憩が取れない、記録が終わらない、業務の負担が偏る、相談できる場がない。このような職場では、多少手当が増えても長く働き続けるのは難しくなります。

処遇改善加算の中に職場環境の改善が組み込まれていることは、働く職員にとって期待できる部分です。

処遇改善は賃金だけの話ではない

処遇改善という言葉を聞くと、給料や手当の話を思い浮かべる人は多いと思います。もちろん、賃金改善は処遇改善の中心です。

ただ、介護現場で働き続けるためには、賃金以外の環境も重要です。業務量が多すぎる、記録が複雑すぎる、職員同士の連携が悪い、研修を受ける余裕がない、腰痛対策が不十分。このような状態が続けば、職員は疲弊します。

職場環境等要件とは、賃金以外の働きやすさに関わる取組のことです。研修機会の確保、面談の実施、腰痛予防、業務改善、ICT機器の活用、記録業務の見直しなどが関係します。

処遇改善加算が本当に現場のための制度になるには、手当を出すだけでは足りません。働く環境そのものが少しでも良くなることが必要です。

働く環境を整える事業所が評価される流れになっている

令和8年度の処遇改善加算では、生産性向上や協働化への取組がより重要になっています。これは、働く環境を整える事業所を評価する流れとも言えます。

生産性向上という言葉は、介護現場では少し冷たく聞こえることがあります。少ない人数で今まで以上の仕事をさせるように感じる人もいるかもしれません。

しかし、本来の意味での生産性向上は、職員の負担を減らすために使われるべきものです。記録の二度手間を減らす。情報共有をしやすくする。福祉用具を使って身体の負担を減らす。業務の役割分担を見直す。こうした取組で現場が少しでも楽になるなら、それは働く職員にとって意味があります。

ただし、制度上の要件を満たすためだけの取組になってしまえば、現場は変わりません。大事なのは、実際に職員が働きやすくなるかどうかです。

現場目線では「本当に働きやすくなるか」が重要

現場目線で見ると、職場環境等要件は「書類に書ける取組があるか」ではなく、「本当に働きやすくなっているか」が重要です。

たとえば、面談を実施したことになっていても、実際には職員の悩みが聞かれていなければ意味がありません。ICTを導入しても、入力作業が増えただけなら逆効果です。

制度上は職場環境を改善していることになっていても、現場の実感とズレることはあります。

だからこそ、処遇改善加算を考えるときには、加算を取るための書類だけでなく、その取組が現場にどう届いているかを見る必要があります。

一度わかりやすくなった処遇改善加算が、また複雑になっている

令和6年度に処遇改善関係の加算は一本化され、一度は分かりやすくなったように見えました。しかし令和8年度では、上乗せ区分や特例要件が加わり、再び制度が複雑になっています。

職員側から見ると、自分の給与に関係する制度なのに、内容が分かりにくい。事業所側から見ると、要件確認や書類作成の負担が増える。ここが今回の大きな問題です。

旧3加算が一本化され、加算区分も一度コンパクトになった

以前の処遇改善関係の加算は、介護職員処遇改善加算、介護職員等特定処遇改善加算、介護職員等ベースアップ等支援加算に分かれていました。

それぞれの加算の中にも区分があり、処遇改善の仕組みはかなり分かりにくいものでした。

令和6年度には、これらの加算が介護職員等処遇改善加算として一本化され、加算区分もⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳという形に整理されました。現場から見ると、旧3加算が分かれていた時よりも、全体像は見えやすくなった面があります。

もちろん、Ⅰ〜Ⅳにまとまったからといって、制度が完全に簡単になったわけではありません。要件や配分、計画書、実績報告などは引き続き必要です。

それでも、細かく分かれていた処遇改善関係の加算が一つにまとまり、区分もⅠ〜Ⅳに整理されたことで、以前よりは理解しやすくなった部分がありました。

令和8年度はⅠイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロなどが出てきて、再び分かりにくくなった

令和8年度では、加算Ⅰイ、Ⅰロ、Ⅱイ、Ⅱロといった区分が出てきます。加算Ⅰ・Ⅱの中にさらに区分ができるため、職員側から見ると違いが分かりにくくなります。

事業所側から見ても、どの区分を取得できるのか、どの要件を満たす必要があるのか、いつまでに何を整える必要があるのかを確認しなければなりません。

加算率が上がること自体は良いことです。上乗せ区分によって、より取組を進める事業所が評価されることも理解できます。

ただ、制度を使う側から見ると、分かりにくさが増しているのも事実です。

同じ時期に補助金や賃上げ支援の話も重なり、現場ではさらに分かりにくい

令和8年度の処遇改善加算は、同じ時期に補助金や賃上げ支援の話も重なっているため、現場ではさらに分かりにくくなっています。

処遇改善加算、職場環境改善、賃上げ支援、補正予算。似たような言葉が近い時期に出てくるため、事業所側が混乱しやすい状況になっています。

処遇改善加算と補助金・賃上げ支援事業は分けて読む必要がある

処遇改善加算と補助金、賃上げ支援事業は分けて読む必要があります。どれも介護職員や介護従事者の処遇改善に関係しますが、制度としては同じものではありません。

処遇改善加算は、介護報酬の中で算定する加算です。事業所が要件を満たして加算を取得し、その加算額を賃金改善に使います。

一方で、補助金や賃上げ支援事業は、別の財源や別の申請の流れで行われるものです。目的が近いため混同しやすいですが、制度の仕組みや申請内容は分けて考える必要があります。

ここを混ぜてしまうと、「この要件は処遇改善加算の話なのか」「補助金の話なのか」「両方に関係するのか」が分からなくなります。

政府資料の中でも、制度の説明が入り組んでいる

今回の制度は、政府資料の中でも説明が入り組んでいます。処遇改善加算の拡充、令和7年度補正予算、賃上げ・職場環境改善事業、令和8年度介護報酬改定が近い文脈で出てきます。

そのため、介護事業所の管理者や事務担当者が読んでも、すぐに全体像をつかむのは簡単ではありません。

実際、僕のところにも、2月の時点で他のデイサービスの管理者から質問がありました。処遇改善加算と令和7年度の職場環境改善に関する事業は一緒なのか、別なのかという内容でした。

僕自身も最初は補助金側の話として見ていた部分がありましたが、実際には令和8年度の処遇改善加算にも関係してきました。たとえば、ケアプランデータ連携システムの話は、補助金や職場環境改善の文脈だけでなく、令和8年度の処遇改善加算の特例要件にも関係します。

このように、似たような言葉と取組が複数の制度にまたがって出てくるため、現場では非常にややこしくなっています。

申請や対応時期が重なることで、事業所の負担が増えている

制度が複雑なうえに、申請や対応の時期が重なることも、事業所の負担を大きくしています。

年度始まりの時期は、もともと事業所の事務負担が重くなりやすい時期です。人員体制の確認、加算の届出、報酬改定への対応、職員の異動や採用、利用者の契約や計画の見直しなど、やることが多くあります。

そこに処遇改善加算や職場環境改善、賃上げ支援に関する書類が重なると、管理者や事務担当者の負担はさらに増えます。

実際、処遇改善加算や補助金関係の書類を外部に依頼している事業所もあります。僕自身も、そのような書類作成を手伝う立場にいるため、複雑な思いがあります。

外注そのものが悪いという話ではありません。制度が複雑であれば、専門的な知識を持つ人に依頼するのは現実的な選択です。ただ、職員の処遇改善や職場環境改善のための制度なのに、その対応に多くの労力や費用がかかるのであれば、本末転倒な部分があります。

職員を楽にするための制度なら、制度に対応するための負担も軽くしていく必要があります。

注意点:「今回から介護職員以外にも対象が広がった」と読むのは誤り

令和8年度の資料には、「今回から、処遇改善加算の対象について、介護職員のみから介護従事者に拡大する」という趣旨の表現があります。

この表現は間違いです。令和8年度から初めて介護職員以外にも処遇改善加算を配分できるようになったわけではありません。

令和8年度から初めて広がったわけではない

令和6年度の一本化の時点で、すでに「介護職員等処遇改善加算」になっています。介護職員だけを対象にした制度ではなく、事業所内で柔軟な配分が認められる形になっています。

そのため、今回から初めて介護職員以外にも支払えるようになった、という理解は違います。

ただ、もしこれまで何らかの勘違いで「処遇改善加算は介護職員だけに支払うもの」と考えていた事業所があるなら、今回をきっかけに見直してみてもよいのではないでしょうか。

介護職員以外にも配分できる

僕が働く事業所でも、介護職員以外に生活相談員や機能訓練指導員へ処遇改善手当を支払っています。

介護職員の給料を上げることは大切です。これは間違いありません。現場で直接介助を担う介護職員の負担は大きく、処遇改善の中心に置かれるべきです。

ただ、介護事業所で働く人は介護職員だけではありません。差をつけることはあってよいと思います。職種や役割、勤務時間、責任の重さによって配分に違いがあるのは自然です。

それでも、介護職員以外の職員にも、できる範囲で処遇改善の効果が届くようにすることは大切です。今回、加算率が上がるのであれば、その分を介護事業所で働く人たち全体にどう届けるかを考える機会にしてほしいところです。

令和8年度の処遇改善加算で、介護職員が見るべきポイント

介護職員が令和8年度の処遇改善加算を見るときは、「自分の給料がいくら上がるか」だけでなく、「事業所がどの加算を取るのか」「配分方針はどうなるのか」「職場環境は本当に良くなるのか」を見る必要があります。

制度の数字だけでは、現場の実感は分かりません。加算率が上がっても、配分や職場環境の改善につながらなければ、働く職員にとって十分な意味はありません。

自分の給料が必ず上がる制度ではなく、事業所の算定と配分を通じて反映される

処遇改善加算は、職員一人ひとりに国から直接支給されるものではありません。事業所が加算を算定し、その加算額を賃金改善に使う制度です。

そのため、介護職員は、自分の事業所がどの加算区分を取得しているのかを知ることが大切です。加算Ⅰなのか、Ⅱなのか、Ⅲなのか、Ⅳなのか。令和8年度であれば、Ⅰイ、Ⅰロ、Ⅱイ、Ⅱロなどの区分も関係してきます。

また、配分方針も重要です。処遇改善手当が基本給に反映されるのか、毎月の手当として支払われるのか、一時金として支払われるのか。どの職種にどのように配分されるのか。ここは事業所によって違いが出ます。

「加算率が上がったのに、自分の給料はどれくらい変わるのか分からない」と感じる職員もいると思います。その場合は、感情だけで判断するのではなく、事業所の説明や配分方針を確認することが必要です。

職場環境等要件が、実際の働きやすさにつながっているかを見る

介護職員が見るべきなのは、賃金だけではありません。職場環境等要件が、実際の働きやすさにつながっているかも重要です。

たとえば、研修の機会があるか。面談で職員の意見を聞いているか。腰痛対策が行われているか。記録業務や情報共有の負担が減っているか。業務の役割分担が見直されているか。

これらは、制度上の要件であると同時に、職員が働き続けられるかどうかに関わる部分です。

ただし、職場環境等要件は、実施していることになっていても、現場の実感とずれることがあります。面談をしている、研修をしている、ICTを導入している。それだけでは十分ではありません。

現場職員にとって大切なのは、その取組によって本当に負担が減っているか、働きやすくなっているかです。

介護事業所・経営者が見るべきポイント

介護事業所や経営者にとって、令和8年度の処遇改善加算はチャンスでもあり、負担でもあります。加算率の引上げによって賃金改善の原資が増える可能性がある一方で、要件対応や書類作成の負担は大きくなります。

制度を活用するためには、単に加算を取るだけでなく、現場にどう還元するかを考える必要があります。

加算率の引上げはチャンスだが、要件対応が必要になる

加算率の引上げは、事業所にとって賃金改善を進めるチャンスです。これまで十分に手当を出せなかった職種にも、配分を見直すきっかけになるかもしれません。

ただし、加算率が上がるからといって、自動的にすべての事業所が上乗せを受けられるわけではありません。上位区分を取るには、要件を満たす必要があります。

令和8年度では、加算Ⅰロ、Ⅱロなどの上乗せ区分に対応するために、特例要件や生産性向上、協働化の取組が関係します。申請時点では誓約で対応できる部分があっても、後で実績報告が必要になる場合があります。

つまり、目先の申請だけでなく、年度内に本当に対応できるかまで考えなければなりません。

職場環境等要件は、形式だけでなく現場改善として考える必要がある

職場環境等要件は、形式的に項目を埋めるだけでは意味がありません。現場職員にとって実感のある改善につなげる必要があります。

たとえば、面談を実施するなら、ただ記録を残すだけではなく、職員の不満や希望を聞き、改善できることにつなげる必要があります。

ICTを導入するなら、現場の入力負担が減るようにしなければいけません。福祉用具を導入するなら、使いやすい場所に置き、職員が使えるように研修する必要があります。

職場環境等要件は、加算を取るための義務として見ると負担になります。しかし、離職防止や業務改善につながる取組として考えれば、事業所にとっても意味があります。

事務負担をどう減らすかも、経営側の重要課題になる

令和8年度の処遇改善加算では、事務負担をどう減らすかも重要です。制度が複雑になるほど、管理者や事務担当者に負担が集中します。

介護事業所では、書類を作る人もまた現場を支える職員です。管理者が制度対応に追われれば、現場を見る時間が減ります。事務職員が書類に追われれば、請求や利用者対応にも影響が出ます。

また、制度が複雑になれば、外部の専門家に依頼する事業所も増えます。外注が必要になる場面があることは理解できます。しかし、職員の処遇改善や職場環境改善のための制度なのに、その対応に多くの労力や費用がかかるのであれば、現場にとっては大きな負担です。

書類や申請が簡単になるだけでも、管理者や事務担当者の負担は減ります。職員を楽にするための制度なら、制度に対応するための負担も軽くしていく必要があります。

令和8年度の処遇改善加算は、期待できる一方で分かりにくい点も多い

令和8年度の処遇改善加算は、賃金アップと職場環境改善に期待できる制度です。一方で、制度の複雑さや申請負担の増加も大きな問題です。

働く職員にとっては、加算率の引上げによって処遇改善に期待できる部分があります。事業所にとっては、より多くの賃金改善を行える可能性があります。

しかし、その一方で、加算区分が複雑になり、補助金や職場環境改善の制度とも話が重なり、現場では非常に分かりにくくなっています。

職員にとっては賃金アップと職場改善に期待できる

職員にとって、令和8年度の処遇改善加算は前向きに見られる部分があります。加算率が上がれば、賃金改善に使える原資が増える可能性があります。

また、職場環境等要件や生産性向上への取組が制度に組み込まれていることで、働く環境の改善にも期待できます。

もちろん、すべての職員の給料が必ず上がるわけではありません。職場環境が必ず良くなるとも言い切れません。

それでも、制度の方向性として、賃金改善と職場環境改善の両方が求められていることは、働く職員にとって大事なポイントです。

事業所にとっては、制度理解と事務対応の負担が増える

事業所にとっては、制度理解と事務対応の負担が増えます。加算区分が増え、特例要件があり、職場環境等要件への対応も必要になります。

さらに、同じ時期に補助金や賃上げ支援事業の話も出てくるため、制度の整理が難しくなります。

現場を改善するための制度であるはずなのに、その制度に対応するために現場側の負担が増える。この矛盾は無視できません。

介護事業所にとって必要なのは、加算を取ることだけではありません。制度を理解し、無理なく対応し、現場に還元できる形を作ることです。

この制度は「賃上げの話」だけでなく「介護現場をどう支えるか」の話として見る

令和8年度の処遇改善加算は、「賃上げの話」だけではありません。介護現場をどう支えるかという話です。

賃金改善は必要です。介護職員の給料はもっと上がるべきですし、介護事業所で働く他の職種にも、できるだけ処遇改善の効果が届くべきです。

同時に、働く環境の改善も必要です。記録業務、職員間の連携、腰痛対策、研修、面談、ICT活用、業務分担の見直しなど、現場の負担を減らす取組がなければ、職員は定着しません。

そして、制度を運用する事業所側の負担も考える必要があります。書類が複雑になりすぎれば、処遇改善のための制度が、現場に別の負担を生んでしまいます。

令和8年度の処遇改善加算は、賃金アップに期待できる制度です。ただし、それだけで終わらせるのではなく、職場環境の改善、事業所の事務負担、介護事業所全体で働く人たちへの配分まで含めて見る必要があります。

制度が現場に届くかどうかは、最終的には事業所の運用にかかっています。だからこそ、職員も事業所も、今回の改定を「加算率が上がった」という話だけで終わらせず、介護現場をどう良くしていくかという視点で見ていくことが大切です。

目次