<介護DX第1回>介護DXの新たな取り組み「介護情報基盤」で何が変わる?【介護職人が解説】

介護職人ラボ08062502

参考:厚生労働省 WEB MAGAZINE 介護DXの新たな取り組み

目次

介護情報基盤は介護DXの入口として始まる取り組み

介護情報を一つの基盤で扱うための仕組み

介護DXという言葉を聞くと、現場の仕事が一気に楽になるような印象を持つ人もいるかもしれません。しかし、今回の厚生労働省の情報を見る限り、介護情報基盤は、いきなり現場の介助業務を大きく変えるものというより、介護に関わる情報の流れを少しずつ整理していくための仕組みだと受け止めた方が自然です。

介護情報基盤とは、簡単に言えば、介護保険に関する情報やケアプランなどを、関係する機関や事業所が必要に応じて扱いやすくするための基盤です。これまで紙の書類、FAX、郵送、窓口での手続きなどに分かれていた情報のやり取りを、デジタル化してつなげていく取り組みと考えると分かりやすいと思います。

2026年4月以降、準備ができた自治体から順次始まる

厚生労働省の情報では、介護情報基盤は2026年4月以降、準備が完了した自治体から順次利用可能になるとされています。つまり、全国の介護事業所で同じ日に一斉に大きく変わるというより、自治体ごとに準備状況を見ながら少しずつ始まっていく段階です。

そのため、今回の話は「介護情報基盤ができたから、明日から現場が楽になる」というものではありません。むしろ、介護業界がこれまで続けてきた紙中心の情報共有を、これからどう変えていくのか。その入口として見る方が、現場感覚には近いと思います。

今回の記事では制度の細部より現場からの受け止め方を見る

介護情報基盤には、介護保険情報やケアプラン情報など、さまざまな情報を扱う仕組みが含まれます。ただし、制度の細かい内容をすべて追いかけようとすると、かなり説明的な記事になってしまいます。

ここでは、厚生労働省の情報をきっかけにしながら、介護現場や介護事業所の目線で「何が変わりそうなのか」「どこに現実的な意味があるのか」を見ていきます。介護情報基盤は、制度の名前だけを見ると少し分かりにくいですが、現場目線で見ると、これまでの情報共有のあり方を見直す取り組みだと考えられます。

紙・FAX・郵送に慣れた介護現場ほど変化は大きい

紙やFAXは見やすく慣れている職員も多い

介護現場では、今でも紙やFAXが多く使われています。これを古い、無駄だと切り捨てるのは簡単ですが、実際には紙には紙の見やすさがあります。パソコンの画面で確認するより、紙で見た方が把握しやすいと感じる職員も少なくありません。

特に介護現場は、年齢層が幅広い職場です。パソコンやタブレットに慣れている職員もいれば、紙で確認する方が安心する職員もいます。だから、紙やFAXを使っているから遅れている、という単純な話ではありません。

便利さの一方で、紛失・郵送待ち・確認の手間が残る

ただし、事業所の運営という目線で見ると、紙・FAX・郵送には無駄も多くあります。紙はなくすことがあります。印刷の手間もあります。郵送は届くまでに時間がかかります。FAXも、送った側と受け取った側で確認が必要になります。

個人情報が含まれる書類では、どこまで送ってよいのか気を使う場面もあります。必要な情報をそのまま送れないために、一部を伏せたり、別の方法で送ったりすることもあります。そうなると、情報を共有しているつもりでも、受け取る側にとっては十分ではない場合も出てきます。

介護情報基盤に期待できるのは、まずこの紙・FAX・郵送で分かれていた情報の流れを整理することです。現場で働く人が日々感じている「面倒」というより、「これは無駄ではないか」という部分に手を入れていく取り組みだと考えられます。

電話は直接話せるため、紙やFAXとは分けて考える

ここで分けて考えたいのが電話です。紙・FAX・郵送は、基本的に文字や書類を送る手段です。一方で電話は、直接話して確認できる手段です。急ぎの確認や、文章だけでは伝わりにくい内容では、電話の方が早いこともあります。

そのため、介護DXを考えるときに、紙・FAX・郵送と電話を同じように扱うと、少し現場の感覚から離れてしまいます。紙や郵送で行っていた情報共有はデジタル化しやすい部分がありますが、電話には電話の役割があります。

すべてを画面上のやり取りにすればよいというより、どの情報をどの形で共有するのが一番よいのかを考える必要があります。介護情報基盤は、電話まで不要にするものではなく、まずは紙や郵送に分かれていた情報の流れを整理していくものとして見た方が自然です。

介護情報基盤で変わりそうなのは情報共有の流れ

ケアプランや認定情報は事業所運営にも影響する

介護事業所にとって、情報が届くタイミングはとても重要です。たとえばケアプランの情報が届くのが遅れると、事業所側の準備も遅れます。デイサービスであれば、通所介護計画書の作成や契約書類の準備、利用開始前の確認などに影響します。

もちろん、これはデイサービスに限った話ではありません。訪問介護でも、施設サービスでも、利用者の状態や介護保険の情報、サービス内容に関する情報が正しく共有されなければ、事業所側の動きは取りにくくなります。

情報が遅れると書類作成や契約準備が窮屈になる

介護サービスは、利用者がサービスを使い始める前に確認しなければいけない情報があります。介護度、認定期間、ケアプランの内容、サービス利用の目的、注意すべき状態などです。これらの情報が遅れると、現場だけでなく、相談員や管理者の準備も窮屈になります。

利用開始日が近い場合は、情報が届くのを待ちながら計画書や契約書類を整えることになります。情報が早く正確に確認できれば、その分、事業所側も落ち着いて準備できます。反対に、情報が届かない、足りない、確認に時間がかかるという状態が続くと、事務的な負担は大きくなります。

ケアマネや自治体を経由する連絡の負担が変わる可能性がある

これまでは、ケアマネジャーが情報を受け取り、それを各サービス事業所へ伝える流れが多くありました。自治体からケアマネジャーへ、ケアマネジャーから事業所へ、事業所からまた別の関係者へというように、人を経由して情報が流れていく形です。

この流れは、どうしても時間がかかります。誰かが送り忘れることもあります。郵送で届くまで待つこともあります。FAXでは個人情報を伏せて送るため、必要な情報が一部しか届かないこともあります。すると、情報が遅いだけでなく、そもそも事業所が知りたい情報を十分に受け取れていない場合も出てきます。

介護情報基盤がうまく機能すれば、このような「人から人へ順番に伝えていく」情報共有の形が変わる可能性があります。関係する機関や事業所が、必要な情報を必要な形で確認できるようになれば、途中に挟まる人の負担も減るかもしれません。

特にケアマネジャーは、さまざまな関係者との連絡調整を担っています。介護情報基盤によって、ケアマネジャーに集中していた確認や伝達の一部が整理されれば、ケアマネジャー自身の負担軽減にもつながる可能性があります。

これは「ケアマネジャーが不要になる」という話ではありません。むしろ、単純な情報伝達にかかる手間が減ることで、本人や家族への支援、サービス調整、生活全体を見る役割に時間を使いやすくなると考えた方が自然です。

介護現場がすぐ楽になる話ではない

新しい仕組みは導入直後に覚えることが増える

介護情報基盤は、将来的には業務の効率化につながる可能性があります。ただ、現場目線で見ると、新しい仕組みが入った直後は、むしろ手間が増えることも考えておく必要があります。

新しいシステムが入れば、まず覚えなければいけません。ログイン方法、確認方法、登録方法、誰が担当するのか、どこまで入力するのか。事業所内でルールを決める必要もあります。慣れるまでは、今までのやり方の方が早いと感じる職員も出てくると思います。

今までのやり方と新しいやり方が並行する時期がある

さらに、こうした仕組みは、ある日を境にすべてが完全に切り替わるとは限りません。しばらくは、今までの紙やFAXでのやり取りを残しながら、新しい仕組みも使う期間が出てくる可能性があります。そうなると、確認する場所が増え、入力や管理の手間も一時的に増えるかもしれません。

これは介護DXに限った話ではありません。介護保険制度自体も、これまで何度も改正されてきました。報酬改定や新しい加算、記録や計画書の見直しなど、介護事業所はそのたびに新しいルールへ対応してきました。現場からすると、ようやく慣れたと思ったらまた変わる、という感覚になることもあります。

それでも、介護保険制度はまだ変化の途中にある制度です。社会の高齢化、働き手の不足、インターネットやAIなどの技術の変化を考えれば、昔の仕組みのまま続ける方が難しくなっています。最初に大変さがあるとしても、介護DXそのものは避けて通れない流れになっていくと思います。

まず影響が出やすいのは相談員・管理者・事務側の業務

ここで大切なのは、介護情報基盤によって「現場の介護職員の身体的な負担がすぐ軽くなる」と考えすぎないことです。利用者の移乗、入浴介助、排泄介助、送迎、見守りなど、直接的な介護業務が急に減るわけではありません。

まず影響が出やすいのは、相談員、管理者、事務職、ケアマネジャーなど、情報を確認したり、書類を整えたり、関係機関とやり取りしたりする立場の人たちだと思います。

現場職員にとっては、すぐに大きな変化を感じるというより、事業所全体の情報の流れが少しずつ変わっていく形になるのではないでしょうか。

介護情報基盤はこれからの介護を変える第一歩

情報が集まることで手続きや確認の無駄は減る可能性がある

介護情報基盤は、介護現場のすべてを一気に変えるものではありません。しかし、これまで分散していた情報を一つの流れにまとめていくという意味では、介護業界にとって大きな変化の入口になる取り組みです。

介護の仕事は、人と人との関わりが中心です。利用者の表情を見ること、家族の不安を聞くこと、身体の変化に気づくこと、安心して過ごせるように支えること。こうした部分は、どれだけ仕組みが進んでも簡単には置き換えられません。

一方で、情報の確認や書類のやり取り、郵送待ち、FAX確認、同じ内容を何度も伝える作業は、本来できるだけ減らしていくべき部分です。介護職員やケアマネジャー、相談員、管理者が、本当に人に向き合う時間を確保するためには、こうした周辺業務の無駄を減らすことも必要です。

ただし現場の身体的な負担軽減とは分けて見る必要がある

もちろん、介護情報基盤がすぐに理想通り機能するとは限りません。自治体ごとに開始時期も異なりますし、事業所ごとの対応力にも差が出る可能性があります。新しい仕組みに慣れるまでには時間がかかります。最初は、楽になるより大変さを感じる事業所もあると思います。

介護情報基盤によって情報共有が便利になっても、それだけで現場の人手不足が解決するわけではありません。直接介助に入る職員の負担と、情報共有や事務手続きの負担は分けて考える必要があります。

ただ、紙・FAX・郵送に頼ったままでは、今後の介護業界を支えていくには限界があります。働き手が不足していく中で、限られた人員で介護サービスを続けていくためには、情報共有の仕組みを変えていく必要があります。

今後の介護DXを考える入口として受け止める

今回の介護情報基盤は、その第一歩として見るのがよいと思います。現場の仕事が明日から劇的に変わるわけではありません。しかし、介護に関わる情報が必要な人に届きやすくなり、確認や手続きの無駄が少しずつ減っていけば、介護事業所の働き方にも影響していくはずです。

介護DXは、きれいごとだけで語れるものではありません。新しい負担もありますし、覚えることも増えます。それでも、これからの介護を考えると、避けるよりも、どう現場に合う形で使っていくかが大切になります。

介護情報基盤は、まだ始まったばかりの取り組みです。だからこそ、今の段階では細かい制度をすべて理解しようとするより、介護の情報共有がこれから変わっていく入口に立っていると受け止めることが大事だと思います。

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