有料老人ホームに係る制度見直しについて|囲い込み対策だけで問題は解決するのか【介護職人が解説】

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厚生労働省は、住宅型有料老人ホームで中重度の要介護者が増え、介護付き有料老人ホームとの機能的な差が小さくなっているとして、有料老人ホームの制度を見直しています。あわせて、併設・隣接する介護事業所の利用へ誘導する、いわゆる「囲い込み」への対策も強化する方針です。

入居者が自由にサービスを選べない状態や、必要性を超えたサービス利用は防がなければなりません。ただし、住宅型有料老人ホームで重度者が増えた理由や、同じ法人のサービス利用が多くなる背景まで見なければ、囲い込みという言葉だけでは現状を捉えきれないと僕は思います。

参考:厚生労働省 全国介護保険担当課長会議資料 令和8年7月15日(水)

目次

住宅型有料老人ホームの制度見直しが進められている

住宅型で中重度の入居者が増えている

有料老人ホームには、大きく分けて介護付き住宅型があります。介護付き有料老人ホームは、ホームが介護サービスまで一体的に提供する仕組みです。一方、住宅型有料老人ホームでは、入居者が訪問介護やデイサービスなど、外部の介護事業所と契約してサービスを利用します。

もともと住宅型は、自立度の高い高齢者も暮らす住まいとして位置づけられていました。しかし、厚労省の資料では、住宅型に入居する要介護3以上の割合が、2007年の約40%から2024年には約56%へ増えています。医療処置を必要とする入居者や、亡くなるまで暮らす人も増え、実際に担う役割は介護付きへ近づいています。

それにもかかわらず、住宅型と介護付きでは、人員や運営に関する制度上の扱いが異なります。そこで厚労省は、中重度者などを対象とする一部のホームに登録制を導入し、運営基準や入居者保護を強化する方向を示しています。

囲い込みも制度上の課題とされている

住宅型では、ホームと介護事業所が別の事業者としてサービスを提供します。そのため、入居者は本来、複数の事業所から自分に合うサービスを選べるはずです。

ところが、ホームに併設・隣接する訪問介護や居宅介護支援事業所の利用へ誘導され、実質的にほかの事業所を選べないケースがあります。居宅介護支援事業所は、ケアマネジャーが本人の状態や希望を確認し、利用する介護サービスを組み立てる事業所です。そこまでホーム側と一体になれば、必要以上のサービスがケアプランに組み込まれるおそれもあります。

厚労省は、このように入居者の選択が制限され、過剰なサービスにつながる状態を囲い込みとして問題視しています。今回の見直しでは、住宅型ホームと、相談支援や介護サービスを担う事業者との独立性を確保する措置も導入される予定です。

住宅型が重度者の受け皿になった背景も見る必要がある

住宅型を積極的に選んだとは限らない

住宅型の入居者が重度化したという数字だけを見ると、住宅型有料老人ホームが重度者を積極的に受け入れ、外部の介護サービスを多く利用させる運営へ変わったようにも見えます。実際に、そのような事業所が含まれている可能性はあります。

ただし、入居者側の事情も考える必要があります。要介護度が高くなっても特養へすぐに入れるとは限らず、介護付き有料老人ホームにも空きがあるとは限りません。費用や地域、医療対応などの条件が合わず、希望する施設を選べないこともあります。

その結果として、住宅型有料老人ホームが行き先の一つになっていることも考えられます。住宅型を望んで選んだというより、暮らせる場所を探した末に住宅型へたどり着き、そこで外部の介護サービスを組み合わせながら生活している人もいるはずです。

今回の資料だけで、特養や介護付きへ入れない人が住宅型へ流れているとまでは断定できません。しかし、住宅型で重度者が増えた背景を事業者の運営だけに求めるのも早いでしょう。高齢者が増え、介護が必要な人の住まいが不足するなかで、住宅型が実質的な受け皿になってきた可能性も見る必要があります。

重度者を受け入れる役割と制度が合わなくなっている

住宅型は住まいを提供し、介護は外部サービスに任せる仕組みです。しかし、要介護度が高い入居者が増えれば、食事や排泄、移動、夜間の対応など、日常生活のさまざまな場面で介護が必要になります。

制度上はホームと外部事業所が分かれていても、入居者から見れば同じ建物の中で生活が続いています。支援が途切れれば困るため、ホームと介護事業所の連携は欠かせません。ところが、連携を強めれば一体的な運営に見えやすくなり、同一法人のサービス利用が増えれば囲い込みを疑われることになります。

住宅型が重度者を支える場所になった一方で、制度は外部サービスを自由に選ぶ住まいとして組み立てられています。現在起きている問題の一部は、悪質な事業者だけではなく、住宅型が担うようになった役割と制度上の位置づけが合わなくなったことから生じているのではないでしょうか。

同じ法人のサービス利用が多ければ囲い込みなのか

自法人のサービスを勧めること自体は不自然ではない

囲い込みという言葉からは、利益を増やすために利用者を自法人のサービスへ集める姿が想像されます。しかし、同じ法人のサービス利用が多いという結果だけで、利用者本位ではないと判断するのは難しいところがあります。

同じ法人であれば、ホームやケアマネジャーは、その事業所がどのような職員体制で、どこまで対応できるのかを把握しやすくなります。情報共有もしやすく、状態の変化があったときに連携を取りやすいという面もあります。

そこで働く職員が、自分たちの法人のサービスに誇りを持ち、本当に利用者へ勧められると考えている場合もあります。地域で評判がよく、利用者の希望や状態にも合っているなら、自法人の事業所を選ぶこと自体がおかしいわけではありません。

反対に、形式的に他法人の事業所も混ぜれば、利用者本位になるとも限りません。本人に合わない事業所を、利用の偏りを避けるためだけに紹介するのであれば、それも本来のケアマネジメントとは違います。

利用割合から事業者の意図までは判断できない

同一法人への利用の集中は、囲い込みを疑うきっかけにはなります。ただし、数字だけでは、利益を優先して集めたのか、利用者に合うサービスを選んだ結果なのかまでは分かりません。

地域によっては事業所の数が少なく、選択肢そのものが限られています。人気や対応力のある事業所へ利用が集中することもあるでしょう。特定の法人への利用が多いという事実だけで、支援の中身まで否定することはできません。

囲い込みを判断するうえで重要なのは、同じ法人を何割利用しているかだけではありません。どのように説明し、本人や家族がどこまで選び、なぜそのサービスが必要とされたのかを見る必要があります。

問題にすべきなのは利用先ではなく選び方

ほかの選択肢が示されていたか

自法人のサービスを利用していることと、自法人のサービスしか選ばせないことは同じではありません。前者は本人に合った選択の結果かもしれませんが、後者は本人の選択を奪う運営です。

たとえば、入居時に併設事業所との契約を当然のように求める、ほかの事業所を希望しても難しいと説明する、ホームを退去するような不利益をにおわせるのであれば、自由に選べる状態とは言えません。

一方で、複数の選択肢を説明したうえで、連携の取りやすさやサービス内容を本人と家族が理解し、自法人の事業所を選ぶのであれば、結果として利用が集中しても意味は異なります。

必要なサービス量だったか

囲い込みとともに問題になるのが、介護保険サービスの過剰利用です。ただし、何をもって過剰とするのかは簡単ではありません。同じ要介護度でも、認知症の有無、身体状態、家族の支援、住環境によって必要な介護は変わります。

外から見れば回数が多くても、その人が住宅型で生活を続けるために必要な場合があります。反対に、本人が自分で行えることまで訪問介護が担い、自立する機会を奪っているなら、サービスの目的を見直す必要があります。

必要以上のサービスを使わせないことは大切です。しかし、利用回数の多さだけで過剰と決めれば、本当に支援を必要とする人までサービスを減らされかねません。本人の状態や生活を見ずに、数字だけで線を引くことには慎重であるべきです。

介護付きと住宅型を二つに分けるだけでは実態が見えにくい

介護付きでもサービス提供の仕組みは一つではない

厚労省の資料では、介護付きはホームが介護サービスを提供し、住宅型は外部の事業所を利用する形として比較されています。制度の違いを理解する入口としては分かりやすい整理です。

ただし、介護付き有料老人ホームにも、ホームの職員が介護を提供する一般型と、外部の介護事業者へサービスを委託する外部サービス利用型があります。そのため、実際のサービス提供方法を見るなら、介護付きと住宅型を二つに分けるだけでは十分ではありません。

一般型の介護付きと住宅型では、働く職員の役割や介護報酬の受け取り方が大きく異なります。一方、外部サービス利用型の介護付きと住宅型には、外部の事業者が介護を担うという近い部分があります。

もちろん、契約関係やケアプランの作成、費用の仕組みまで同じではありません。それでも、名称だけで現場の体制や入居者が受ける支援を判断すると、実態を誤って捉える可能性があります。

実際に誰が介護を担っているかを見る

ホームを選ぶ側から見れば、有料老人ホームに入れば、そこで必要な介護を受けられると考えるのが自然です。しかし、住宅型では、家賃や食費などをホームへ払い、訪問介護やデイサービスの利用料は各事業所へ支払うなど、住まいと介護の契約が分かれています。

入居者や家族にとって重要なのは、制度上の名称だけではありません。夜間に介護が必要になったとき誰が対応するのか、状態が悪化しても住み続けられるのか、医療との連携はどうなっているのかなど、実際の支援体制を確認する必要があります。

制度見直しを考えるときも同じです。住宅型と介護付きを形式的にそろえるだけでなく、現場で誰が何を担い、入居者の生活がどのように成り立っているのかを見なければ、本当に必要な規制は見えてきません。

囲い込み対策が利用者の不利益にならないかも考える

不正や選択の強制は規制する必要がある

介護保険から報酬を得るために、必要のないサービスを組み込むことは認められません。本人や家族に十分な説明をせず、特定の事業所との契約を事実上の入居条件にするような運営も見直す必要があります。

介護保険には税金と保険料が使われており、事業者には制度を適正に運用する責任があります。民間事業者だから、制度の範囲内であれば何をしてもよいという話ではありません。悪質な請求や選択の強制に対しては、実態を確認したうえで指導や処分を行うべきです。

一律の規制では必要な支援まで狭めかねない

一方で、同一法人の利用が多いことや、サービス回数が多いことだけを基準に規制を強めると、適切な支援まで囲い込みと見なされるおそれがあります。

重度の入居者を住宅型で支えるには、訪問介護や通所サービス、医療などを組み合わせなければ生活が成り立たないことがあります。連携を取りやすい事業所を利用することが、入居者の安心につながる場合もあります。

規制によって事業者がサービスの提案を控え、本来使える支援を案内しなくなれば、負担を受けるのは入居者です。不正を防ぐことと、必要なサービスを使えなくすることは別です。制度を見直すなら、その境界を丁寧に設計する必要があります。

住宅型の見直しは重度者の受け皿と合わせて考える

住宅型有料老人ホームで中重度者が増え、介護付きとの役割が近づいている以上、入居者保護や運営基準を見直すことには意味があります。選択を奪う囲い込みや、必要性のないサービス利用を放置することもできません。

ただし、住宅型がなぜ重度者を受け入れるようになったのかという背景を置き去りにすれば、事業者への規制だけが強まり、入居者の行き先は増えないままです。

介護付きや特養へ入れない人を誰が支えるのか。住宅型で暮らし続けるために、どの程度の介護サービスが必要なのか。同一法人の連携を生かしながら、本人の選択をどう守るのか。今回の見直しでは、囲い込みを防ぐ仕組みだけでなく、重度者の生活を現実に支えられる制度になっているかを見る必要があります。

同じ法人のサービス利用が多いという結果だけでは、利用者本位の支援か、利益を優先した囲い込みかは判断できません。見るべきなのは、本人に選択肢が示され、必要な支援が本人の意思と状態に基づいて組まれているかです。住宅型有料老人ホームの制度見直しも、その原点から考える必要があると思います。

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