2040年の介護を支える人材確保と、介護テクノロジーの役割【介護職人が解説】

介護職人ラボ08082502

厚生労働省の採用特設サイトに、老健局の政策を紹介する「いくつになっても住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会へ」というページがあります。

このページが見据えるのは2040年頃です。85歳以上の人口が急増する一方、生産年齢人口は急減する。介護を必要とする人が増えても、介護を担う人が同じように増えるわけではありません。

介護保険、地域包括ケア、通いの場、認知症、介護テクノロジー、介護情報基盤。ページには幅広い政策が並んでいます。ただ、採用特設サイトに掲載されている意味まで考えると、中心にあるのは「必要な介護サービスを、誰が、どのような現場で支え続けるのか」という問題だと思います。

目次

2040年の介護は人材を確保できなければ成り立たない

厚生労働省は、介護が必要になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられる社会を目指しています。その方向は2040年になって突然始まるものではなく、介護保険制度と地域包括ケアが以前から目指してきたものです。

「住み慣れた地域で暮らす」を今も伝える理由

僕はこのページを読んだとき、「このことを今、改めて伝えるのか」と感じました。国が何も進めてこなかったという意味ではありません。制度が長く続いても、介護保険が何のためにあり、介護が必要になる前から地域でどう暮らすのかという考えが、十分に共有されていない現実があるのだと思います。

しかも今後は、支援を必要とする人が増える一方で、支える側は減っていきます。これまでと同じ人数、同じ働き方、同じ方法でサービスを維持することは難しくなります。

採用人数だけを増やしても人材確保にはならない

ページは「いきいきと働くことができる介護現場に向けて」という項目で、介護人材の確保を喫緊の課題としています。そして、介護職員の賃金改善と、テクノロジーを活用した生産性向上などを組み合わせ、働きやすい職場環境をつくる方向を示しています。

ここで見るべきなのは、何人採用できたかだけではありません。入職した人が生活できる賃金を得られるか。無理な身体介護や事務作業を減らせるか。仕事を続けながら、利用者に必要なケアを提供できるか。人材確保は、採用した後まで含めて考える必要があります。

介護人材の確保とは、人を集めることではなく、働く人が残り、事業所がサービスを続けられる条件をつくることです。

賃金改善は事業所の経営と切り離せない

採用特設サイトでは、介護職員の賃金改善に取り組んでいることが短く示されています。しかし、介護職を選ぶ人にとっても、事業所を運営する人にとっても、賃金をどう上げ、それをどう続けるかは避けられない問題です。

職員へ支給するお金だけでは現場を支えきれない

介護職員の賃金を上げる支援は必要です。待遇が仕事の重さに見合わなければ、介護を選んでもらうことも、働き続けてもらうことも難しくなります。

ただし、職員へ支給するお金だけを用意しても、採用、教育、人員配置、設備更新まで安定するわけではありません。良い職員を育て、必要な人数を配置し、サービスの質を維持するには、事業所そのものに経営の余力が必要です。

僕は、職員の処遇改善と介護事業所の基本報酬を切り離して考えるべきではないと思っています。事業所が質を高め、選ばれ、安定して運営でき、その成果を賃金や職場環境へ返していく。この流れが続かなければ、人材確保も一時的なものになります。

働きやすさを経営判断まで含めて考える

業務が効率化されても、空いた時間へ別の仕事を詰め込めば、職員の負担は変わりません。採用を抑えて同じ人数で仕事を増やせば、現場に余裕は生まれません。

国が支援策を用意しても、職員の待遇、配置、休み方、設備投資をどう変えるかは、最後には法人や事業所の判断へつながります。

賃金改善を働く人の問題、生産性向上を現場の問題、経営を法人の問題として分けると、どこかに無理が残ります。現場では、この三つは一つの運営の中で起きています。

介護テクノロジーは人を減らすためだけの道具ではない

厚生労働省と経済産業省は介護テクノロジーの重点分野を改訂し、2025年4月から9分野16項目で運用しています。見守り、移乗、移動、排泄、入浴、介護業務支援に加え、機能訓練、食事・栄養管理、認知症生活・認知症ケアまで対象が広がりました。

人だけでは難しかったケアを技術が補う

介護テクノロジーというと、記録をタブレットへ替えるような業務効率化を思い浮かべるかもしれません。しかし、9分野16項目が扱う範囲は、それだけではありません。

センサーによる夜間の見守り、移乗時の身体的負担の軽減、排泄の予測、機能訓練のデータ活用、食事や栄養状態の把握など、職員の負担と利用者のケアを同時に変える技術が含まれています。

僕は、マンパワーだけに頼ることが当たり前だった介護現場に、テクノロジーがあることの方が当たり前になるまで進んでほしいと思っています。人を機械へ置き換えるのではなく、人だけでは見つけにくかった変化を捉え、身体的な無理を減らし、その分を利用者への判断や関わりへ向けられるからです。

導入件数より先に変えたい仕事を決める

一方で、9分野16項目のすべてが、どの介護サービスでも同じように役立つわけではありません。施設の夜間見守り、在宅での生活確認、デイサービスの記録や機能訓練では、抱えている課題が違います。

高価な機器を導入しても、職員が使えない、既存の業務と二重になる、得られた情報をケアへ生かせないという状態では、負担は減りません。反対に、現場の課題が明確なら、小さな仕組みでも働き方を変えることがあります。

導入前に確認するのは、「どの機器を買うか」より、「どの仕事の無理を減らし、どのケアを良くしたいか」です。

地域で暮らす政策も働く現場の持続性につながっている

ページには、通いの場、新しい認知症観、国際的な知見の共有、介護情報基盤も紹介されています。一見すると人材確保とは別の政策ですが、支える仕組みが続くかという点ではつながっています。

介護サービスの外側にも支え続ける条件がいる

通いの場は、介護が必要になる前から地域とつながり、社会参加を続ける場所になります。僕も、こうした場所が増えることは重要だと思っています。

ただ、住民や店舗の善意だけに頼れば、続けられる地域と続けられない地域が生まれます。場所、人、費用をどう確保するかまで考えなければ、良い取組でも長くは続きません。

認知症についても、診断されたからといってすべてができなくなるわけではないという見方と、変化を見逃さず必要な治療やケアへつなぐことの両方が必要です。本人の力を尊重することと、支援の必要性を軽く扱わないことは両立します。

政策は「働き続けられる現場になったか」で見る

厚生労働省のページが示す方向は理解できます。賃金改善、介護テクノロジー、地域での支え合い、認知症になっても自分らしく暮らすこと。どれも、これからの介護に必要です。

ただし、それぞれを別々の施策として並べるだけでは、2040年の介護は支えられません。職員の賃金を上げる。事業所が経営を続ける。技術で人の力を補う。そこで生まれた余裕を、利用者の生活とサービスの質へ返す。この流れがつながって初めて、働きやすい介護現場になります。

人材確保の結果は、採用人数だけでは測れません。働く人が報われ、無理なく仕事を続けられ、事業所が必要なサービスを残せているか。採用特設サイトで老健局の政策を知るなら、僕はそこまで見て判断したいと思います。

参考:厚生労働省「いくつになっても住み慣れた地域で自分らしく暮らせる社会へ」厚生労働省「介護テクノロジー利用の重点分野 9分野・16項目のご紹介」(2026年8月25日確認)

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